安全第一・足場の設置方法と組立ての手順
足場(くさび緊結式足場)の基本的な設置方法と組立ての手順について解説していきます。工事現場での転落や墜落事故の多くは、足場を組み立てているとき、もしくは解体しているときに発生します。安全第一で足場を設置するためには、決められた手順に沿って作業を行うことが大切。手順をしっかりとマスターして、安全な作業環境を構築しましょう。
足場の設置方法と組立ての手順
ここからは、足場の基本的な設置方法と組立ての手順について解説していきます。
足場を組み立てる前に知っておくべきこと
工事現場やイベントの設営、大規模広告看板の設置作業など、高さのある足場が必要になるケースはさまざまですが、高さが5メートル以上になる足場を組み立てる場合には、法令(安全衛生法)により、「足場の組立て等作業主任者(国家資格)」を管理者として選ばなければなりません。作業主任者は、足場の組立て等作業主任者講習を受講し、試験に合格した個人を指定します。
また、足場を組み立てる前に、実際に作業を行う現場の状況を確認します。足場の組立図を用意し、敷地や地盤に問題がないかチェック。近接する壁や植物の状況、作業範囲なども併せてチェックします。建物の形にも十分に注意を払い、特に出窓やひさしなどの出っ張りのある部分を頭に入れておきましょう。
足場組み立て前に、ほかに留意する点は、足場材の状態、工具の点検、安全装具の点検などとなります。これらが揃って初めて、安全で効率の良い組立作業が可能です。ここまでのチェックがすべて完了すれば、作業の当日を迎えられます。
足場組立作業当日は、ミーティングを行い、作業の役割分担を行います。それぞれの役割のリーダーとなるスタッフを交え、職人の経験値や技術、健康状態について確認。また、年齢的に現場では働けない人間が混じっていないか確認することも重要です。
その後、作業に入る前に、参加するすべてのスタッフを集めて、作業手順と作業範囲の確認を行います。また、安全に対する意識をスタッフ全員が共有するために、事故の事例を挙げてスタッフに浸透させ、さらに危険予知のための訓練を実施すればパーフェクトです。
足場の設置
事前のミーティングや、安全についての周知が完了したら、いよいよ足場の設置へと移ります。まずは1層目の組立作業に入ります。1層目は、足場の土台になるとても重要な場所です。
足場材を配置し脚部を固定する
足場材を、建物の前に置き、軒の長さに合わせて踏板の幅を調整します。足場材は、足場組立図のとおりに建物前に配置して、その後に支柱、ジャッキベースといった感じで作業するとやりやすいでしょう。ちなみにジャッキベースは、支柱の高さを調整する働きを持つ足場材で、足場自体を水平に保つために使用します。敷盤(アンダーベース)は整地してから設置します。敷盤の役割は、荷重を受け止めながらも分散させることです。
支柱を組み立てる
脚部の固定が終わったら、支柱を組み立てていきます。敷盤の上のジャッキベースに支柱を差し込み、ハンマーで叩いて固定します。その後、ブラケットに合ったサイズの手すりを支柱内側に固定。1スパン分ができたら、さらに手すりを連結。作業床の位置を決めた後、ブラケットを設置し、そこに踏板をセットします。作業床から90センチの高さに手すりを固定します。
2層目・支柱を組み立てる
1層目と同じ要領で支柱と手すり、ブラケットを組み付けていきます。支柱を連結させる部分が、同じ層に集まらないように作ることが重要。2層目以降(1層目も同様ですが)は、足場板などを受け渡す際、必ず口頭で合図しながら行います。事故の原因になるので確実に行いましょう。3層目以降は、同様の作業を繰り返します。
下屋足場を組み立てる
下野足場(げやあしば)は、2階建ての平屋部分の屋根上に組み立てる足場のことです。傾斜がある場所に作るので、傾いたり、崩れたりしないよう適切に補強することが大切です。
地上から組まれている支柱に、根がらみ用の手すり部材を差し込み、屋根の傾斜に合わせるようにポケットの位置決めをします。敷板にジャッキを取り付け、さらに下野に支柱をセットし、固定しながら差し込んでいきます。ジャッキで高さを調整したら、根がらみ用の手すりを取り付けます。その後、支柱にブラケットを差し込んでから踏板の取り付けを行います。踏板から高さ90センチの位置に手すりを取り付けたら、軒上に近い手すりを仮止めします。
筋交いや控え柱を設置する
筋交いは、足場を補強するために、支柱と支柱の間に斜めに取り付ける足場材です。控え柱は、足場に対し垂直に取り付ける足場材で、足場自体が傾くことを防ぐ働きを持ちます。材料は、単管パイプと自在クランプ、打ち込み杭を用意。組立図を見ながら、確実に設置できるように位置をチェックします。他の手順同様に、資材の受け渡しは細心の注意を払い、声かけをしながら行ってください。筋交いは、設置する面に対して45度の角度をつけて取り付けを行います。控え柱は自在クランプを使い、接地面に対して60度の角度で固定します。
階段の取り付け
足場内を移動するためには、階段が必要です。階段を取り付ける際は、階段用の手すりも同時に取り付けることになります。手すりは筋交いを使用してもOKです。
足場を組み立てる際の注意点
足場を組み立てる際には、作業に当たるすべてのスタッフが、ルールを守って行う必要があります。
部材は建物に立てかけない
使用する部材は、建物の前に用意します。しかし、ここでスペースがないなどの理由で部材を建物に立てかけてしまうと、何かの弾みで倒れてしまい、建物や作業員を傷つけてしまう可能性があります。
作業員の出入り口を確保する
足場を組み立てる際は、作業員が頻繁に出入りします。この部分に支柱を立ててしまうと、出入りが妨げられてしまうため、足場の設計段階でこのような事態にならないように配慮しましょう。
支柱のポケットの向きに注意
支柱にあるポケットの位置は方向が決まっているので、適当な向きにしてしまうと正しく手すりや踏板を設置することができません。
声かけで安全確認
繰り返しますが、部材を受け渡す際は、声を掛け合い、受け取る人の様子を目視でよく確認しながら手渡します。スタッフ同士の連携は、安全な作業の基本です。
固定されていない部分に手をかけない
作業の途中には、まだ固定されていない部分があります。このような部分に手をかけてしまうと大きな事故の元になるので気をつけましょう。
足場の設置方法と組立ての手順・まとめ
足場の設置方法と組立ての手順についてかんたんに紹介してきました。足場の設置は、安全第一の意識を作業に関わるスタッフ全員が持ち、作業上のルールを守って行わなければなりません。注意する点に関しては、足場を解体するときもほぼ同様です。事前のチェックと準備をしっかりと行い、ミーティングを通して作業内容と安全を周知し、とにかく事故のない、安全でスムーズな作業を心がけましょう。